デイ・サージャリー

施設の概要

京都大学医学部附属病院手術部デイ・サージャリー診療部門(Day Surgery Unit: DSU)は、主に日帰り手術・短期滞在手術を対象として、2000年から診療を開始しました。以後年に約1300例程度の麻酔科管理症例と3000例程度の各科管理症例を扱うまでに発展してきました。 2016年では麻酔科管理症例の約(200例)が全身麻酔後日帰りで行われました。日帰りが予定されていた患者さんが予定外に入院を余儀なくされた症例は、2016年は止血の確認で1泊入院となった1例のみであり、欧米の大規模研究では以上の報告が大半であることを考えると、この結果は満足できるものと考えます。このような達成には麻酔科医、看護師、外科医、事務職員が一体となったチーム医療が大きく貢献していると考えています。


DSUでのエコーガイド下神経ブロックの様子
DSUでのエコーガイド下神経ブロックの様子

DUS写真PICC
エコーガイド下にPICC留置中

デイ・サージャリー診療部

デイ・サージャリー(日帰り手術)は欧米で現在広く行われている手術のやり方で、手術当日に来院していただき、手術を受け、麻酔がさめたのちに当日もしくは翌日には帰宅するというスピーディーな診療形態です。これまでは手術といえば綿密な検査のため手術の数日前から入院し、手術後も体力が回復するまでしばらく入院治療を行うという入院手術が一般的でした。手術の前後での看護が行き渡る点では良い方法なのですが、入院医療費がかさむなどの欠点がありました。デイ・サージャリーは入院手術の欠点を補う、将来発展する分野として注目されています。 本院は国立病院としてはじめてデイ・サージャリー手術室を作りました。この施設では局所麻酔による簡単な手術はもちろんのこと、全身麻酔によってしかできない比較的大きな手術も手術内容と患者の健康状態とを考慮しておこないます。詳細は各科専門医にお尋ねください。

日帰り麻酔のあれこれ

1.デイ・サージャリーはどの程度普及しているのですか?

日本ではまだ始まったばかりですが欧米ではとても広く受け入れられています。 もともと、1900年代はじめにイギリスのグラスゴーおよびアメリカのアイオワ州で日帰りの外科手術が行われたのが最初です。しかしながら術後の傷や痛みの管理に疑問を持つ医師が多く広く普及するには至りませんでした。 1974年 アメリカで日帰り手術研究会(FASA : Federated Amburatory Surgery Association)が結成され、さらに10年後の1984年には日帰り麻酔研究会(SAMBA : Society for Amburatory Anesthesia)も結成されました。これらの研究会を通じて手術手技、麻酔技法さらに術後管理法が研究、討論されデイ・サージャリーの安全性が確立していきました。

施設数だけでなく1980年代前半には全手術の10-30%程度の手術がデイ・サージャリーとして施行されていにすぎないのに対し1990年には60%を越える手術がデイ・サージャリーの対象になっています。

2.デイ・サージャリーにはどんなメリットがあるのですか?

デイ・サージャリーを推進すると患者さんにとってだけでなく病院、ひいては医療全体にまで良い影響をもたらすものと考えられています。 患者さんにとってのメリット 早期に社会復帰できるので患者の家族や仕事場への負担が最小限で済む 小児・老人では家族と切り離さる期間がないので精神的負担が減る 入院待ちがないので手術日が決められて日常生活の計画がしやすい 入院費用の患者負担が減る 院内感染の危険性が減る 早期離床によって肺炎、肺梗塞、など術後合併症が減少する 病院側のメリット 病棟のベッド回転率が上がる 大手術予定患者のベッドが確保される 外来手術加算による増収 病院のイメージアップ. 外来患者数の増加 国家・社会のメリット 国民医療費全体の減額。

3.デイ・サージャリーは危険ではないのですか?

デイ・サージャリーには大きく分けて麻酔と手術の危険があります。これらの危険性は入院手術と同等です。また医学の進歩、特に日帰り麻酔・日帰り手術の研究によって患者さんにとって快適な術後経過が工夫されています。

麻酔の危険性

全身麻酔は危険なものだと考えておられるあなた。その通り、危険性はゼロではありません。アメリカでの統計では1940年代には全身麻酔が原因で200人に一人が亡くなっています。しかし麻酔科医が研究を重ねた結果新しい麻酔薬が生まれ、より安全な麻酔手技が開発されました。死亡率は年々減少しており1960年代には5000人に一人、1987年の報告では2万5000人に一人になっています。日本での交通事故による死亡率は1万人に一人です。現代の全身麻酔はそれより安全です。 また入院手術ではなくデイ・サージャリーにしたからといって麻酔の危険は変わりません。1993年のアメリカでの報告ではデイ・サージャリー4万件の手術のうち全身麻酔により死亡した人は2人と報告されています。

手術の危険性

手術は出血や痛みを伴い、本来危険性を伴います。しかし近年手術そのものを侵襲が少なく、安全なものに改善する研究が積み重ねられ、成果を上げています。たとえば内視鏡によって小切開だけで手術を行い体の傷を最小限にする術式が開発されました。このような手術は手術後の痛みなどが少なく術後の傷の処置もほとんど要らないためデイ・サージャリーに向いています。

4.どんな手術がデイ・サージャリーでできますか?

欧米では70-80%の手術がデイ・サージャリーで行われていますので、今やどんな手術ができるかというよりは、どんな手術がデイ・サージャリーでできないかが問われる時代です。

しかしながら、京都大学附属病院では患者さんの安全のために手術にある程度の制限を加えることにました。具体的には次の3つの条件を満たすものをデイ・サージャリーとして扱うことにしています。これらの条件は手術を行う科の外来と麻酔科医による全身麻酔外来で判定いたします。

1.健康状態

・既往歴、血液検査、レントゲン、心電図など健康状態のチェックをして大きな病気がないこと

2.手術内容

・短時間ですむ標準的手術であること

・傷のケアが簡単で痛みのほとんどないこと

・出血などの合併症がまれであること

3.患者さんと家族

・デイ・サージャリーの説明が医師からなされて手術を行うことに患者さんが同意していて協力的であること

・責任能力のある成人(家族の人が望ましい)が付き添いとして当日一緒に来院できること

代表的なデイ・サージャリーの手術

皮膚・皮下腫瘍摘出術(レーザー照射術)、舌小帯形成術、鼠経ヘルニア・陰嚢水腫手術、顎下腺手術、気管支狭窄拡張術、痔核根治術、、経尿道的尿路結石除去術、乳腺腫瘍摘出術、下肢静脈瘤手術、関節鏡手術、アキレス腱断裂手術、白内障手術、子宮膣部円錐切除術、不全流産手術、子宮筋腫核出術、顎関節鏡、智歯抜去術、唾石除去術、尿道下裂形成術、義眼床形成術、その他

詳細は各科の外来でお尋ねください。

5.デイ・サージャリー前日までの手続き

1.外来診察

デイ・サージャリーを受けるためにはまずその病気を手術する科の外来で手術がデイ・サージャリーに適当かどうか診察と検査で判定してもらいます。この後患者さんの予定とデイ・サージャリー手術室の予定を見比べながら手術室の予約をします。同時に麻酔科医の診察を受けるためにデイ・サージャリー麻酔科外来の予約もします。

2.手術前麻酔科診察

手術日の前日までに麻酔科の医師の診察を受け安全に全身麻酔ができるかどうか最終チェックします。このときに全身麻酔について詳しく説明いたします。

3.手術前日電話

手術予約や手術前の注意を再確認し、直前の健康状態をチェックしておくために、手術の前日に自宅あるいは勤務先にお電話いたします。

6.デイ・サージャリー当日の注意

当日は全身麻酔を受けるベストコンディションで来院していただきたいと思います。

1.当日の絶飲食

麻酔を始める時に胃の中にものが残っていると麻酔中にもどすことがあり、窒息や肺炎など命に関わる合併症につながります。麻酔前に胃の中を空にしておくために、食事や水分摂取についてはほとんどの場合当日は絶飲食となります。もし守れなかった場合は手術を延期いたします。

2.手術当日から翌日にかけて成人の介護者(付き添い、保護者)が必要です。必ず一緒に来院してください。

3.当日持参するもの

・着替え用の下着、タオル

・いつも飲んでいる薬があればすべてご持参ください。

・手術費用の精算は後日致しますので現金も必要最小限で結構です

4.その他

・かぜ下痢など体調の悪いときには全身麻酔は延期した方がよいこともあります。

・禁煙してください。

7.デイ・サージャリー手術室 受付から帰宅まで

デイ・サージャリー手術室はどこにあるのですか?

手術当日は手術開始予定時間の約1時間前に受付を済ませて京大病院外来診療棟4階受付に来ていただきます。4階は外科、形成外科、心臓血管外科、呼吸器外科など外科系の診察室があるところなので以前に外来診察の折りに見かけた方もあると思います。

まず最初に体の状態をチェックし、全身麻酔が安全かどうかを確認します。そののち手術着に着替えていただき、いよいよ手術室に入ります。

手術後帰宅するまではどこに滞在するのですか?

手術が無事終わって麻酔がさめるまでリカバリー(回復室)というところで休んでいただきます。あるていどはっきりしてきたらステップダウンリカバリー(観察室)で付き添いの家族の方と一緒に帰宅できるようになるまで過ごしていただきます。ソファーでしばらく一緒にくつろいでください。

 

子供の手術なのですが、手術前後で泣いたり騒いだり心配です。

子供は泣いたり騒いだりするのは当たり前ですので仕方ありません。ただ、他の患者さんへの影響を考えて、子供の待合室やリカバリーを別の部屋にしました。ここでは絵本やおもちゃを用意してありますので多少は気が紛れることと思います。好きなおもちゃ、CDなどありましたらご持参ください。

受付から帰宅までの流れを図に示すとこのようになります。

8.帰宅後のことを教えてください。

ステップダウンリカバリー(観察室)で歩いて帰宅できるまで回復してきましたら手術した医師と麻酔科医の診察を受けた後帰宅していただきます。

・発熱や創の痛みやむかつきが起こることがあります。あまり重篤でないことが多く頓服薬でおさまることがほとんどです。

・麻酔が完全にさめるにはさらに時間が必要ですので 翌日まで安静にしてください。自動車や自転車の運転はできません。

 

9.入院になる場合もありますか

あります。

手術の後は傷が痛んだりむかついたりすることがあります。ほとんどの場合は頓服薬で抑えることができますが、それでもおさまらなかったりすることがあります。あるいは傷から出血したり、薬のアレルギーによって重篤な状態になることもまれですがあります。なにかの都合で急に自宅での療養ができなくなったということもあります。このような場合入院していただきます。海外のデイ・サージャリー施設では全身麻酔症例の100から200人に一人が何らかの事情で予定外の入院治療をしています。

 


 

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