研究室案内

麻酔科学の領域は、手術における麻酔などの周術期管理だけではなく、集中治療や疼痛治療などの幅広い分野にまで及びます。当教室は、京都大学大学院医学研究科・侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野として、この領域の主だったトピックを広くカバーする研究を行っています。
当教室で行われている研究の主だった内容について概説します。

また、当教室は大学院生・研究生の募集を行っています。

大学院生募集の案内
大学院への入学を検討されている方は当教室の大学院に対する考え方を御覧下さい。
研究生募集の案内

当教室の研究に興味を持たれた方、共同研究等を希望される方は
e-mail(karin[at]kuhp.kyoto-u.ac.jp )([at]を@に変えてください))にて御連絡下さい。

研究室紹介

研究室紹介(田中グループ)

私(大学院終了後7年、4x歳)は何故研究を続けているのだろうと思うことがあります。臨床業務の合間に、研究について考え、うまくいきそうなら大学院生にやってみてもらい、あわよくば論文に仕上げ、学位を取得してもらう。秋には、歯を食いしばって申請書を書き、春にはこれでなんとかつづけられそうだと安堵する。そんな生活をここ数年つづけています。
そもそも私の研究生活(少なくとも基礎研究)は大学院の4年でスッパリ終了し、そのあとは臨床に専念するつもりでした。風向きがかわったのは大学院4年生になるころで、このころ学位論文の目処がようやくたち(といってもacceptされたのはギリギリでしたが)、なにもしないのもちょっと形見がせまいので、適当にお茶を濁しつつ、臨床のリハビリでもしようと考えていたのです。
私の指導教官(師匠)のテーマは低酸素であり、そのキーとなる物質が麻酔薬で誘導されるとの論文がちょうどその前にAnesthesiologyに掲載されました。これをご覧になった師匠は、真逆の結果を他の実験系で示してこられていましたので、この結果に我々はいたく憤慨し、追試をしてみることになったのでした。Anesthesiologyの論文は、吸入麻酔薬を培養細胞(癌細胞といってよい)にtreatし、この物質の誘導を示していましたので、それならばということで、マウスに麻酔薬を吸入させて、この物質が本当に誘導されるのかどうかを確認してみました。すると、予想どおり(というべきか)麻酔をしてもこの物質(転写因子)の活性は全然誘導されていませんでした。ところが、複数ある支配遺伝子のうちEPO(エリスロポエチン)遺伝子は、脳でのみ麻酔薬によってむしろ抑制されていたのです。最初これは単なるartifactだと思っていたのですが、何度追試しても結果は同じで、それどころか、吸入麻酔薬のみでなくpropofolやmidazolam、チオペンタールでも共通して抑制することがわかりました。このときが、人生で一番実験したときで、研究は楽しいかどうか、という質問がよくありますが、要は“結果がでる研究”は楽しいし、やりがいがあるということがこのとき実感できました。
結局この研究自体は、大学院時代には終わらず、助教となってからようやくpublish(文献5)することができました。内容の詳細はその論文に譲りますが、この研究を通じて、麻酔薬には、まだ解明されていない不思議な作用があり、とくに全身麻酔薬はグリア細胞にたいしてはっきり共通した作用を持つということを確信するに至りました(現在では私の個人的思い込みと言われても仕方がありませんが・・)。
そこから派生して、こんどは麻酔薬がもうひとつのグリア細胞であるミクログリアに介する作用について研究し(文献2)ました。思い返せば、まだそのころは職場のマンパワーも比較的豊富で、研究日が欲しいといえば、むしろ歓迎されるくらい恵まれた環境であったこともラッキーでした。
そうこうしているうちに、大学院生と仕事をするようになり、これまでの研究とは違うテーマ、たとえば麻酔薬の中枢神経系の発生への影響であるとか、悪性腫瘍に対する麻酔薬の影響といったようなことにまで手をだすようになりました。もちろんこのようなテーマに真正面から切り込んでいるというよりは、いままで自分たちがやってきた実験系を少し変えてみることで、むしろこのような現在麻酔科学において重要とされているテーマに、なにか関連づけるような仕事ができればいいな、と思っています。
大学院卒業後、自分の研究に対するかかわりは減ってきていますし、知識もだんだん時代遅れになってきているのは否めません、それでもマンパワー(一緒に仕事してくれる大学院生)とすこしばかりの研究費、そして教室の皆様が捻出してくださる研究の時間がある間は、やはり研究にかかわっていたいと思います。
現在は以下のようなテーマで研究をしています。

  1. 前立腺癌細胞におけるandrogen受容体の動態の麻酔薬が及ぼす影響について(辰巳先生はこのテーマで第63回日本麻酔科学会最優秀演題を獲得)
  2. 吸入麻酔薬が脳IL-6誘導に及ぼす影響とその臨床的意義について
  3. 敗血症時の脊髄における炎症性変化について

この根底にあるのは、先ほども書きましたが、麻酔薬には、まだ明らかになっていない不思議な作用がある、ということであり、その一端でも明らかにできれば、これほど喜ばしいことはありません。

研究室メンバー (研究室メンバー)
  • 教員:田中具治
  • 教員:辰巳健一郎
  • 院3:廣津 聡子
  • 院2:岩田良佳
  • 客員研究員:松山智紀

田中(右):日本麻酔科学会第60回学術集会にて最優秀演題賞獲得
“麻酔薬は敗血症時の視床下部における炎症性サイトカイン誘導を抑制する”
辰巳(左):日本麻酔科学会第63回学術集会にて最優秀演題賞獲得
“ヒト前立腺癌細胞におけるアンドロゲン受容体の転写活性に対する全身麻酔薬の影響”

当研究グループの研究内容

文献

1.Matsuyama T, Tanaka T, Tatsumi K, Daijo H, Kai S, Harada H, Fukuda K
Midazolam inhibits the hypoxia-induced up-regulation of erythropoietin in the central nervous system
European Journal of Pharmacology 2015; 761: 189-198
2.Tatsumi K, Hirotsu A, Daijo H, Matsuyama T, Terada N, Tanaka T
Effect of propofol on androgen receptor activity in prostate cancer cells
European Journal of Pharmacology 2017; 809: 242-252
3.Kai S, Tanaka T, Matsuyama T, Suzuki K, Hirota K
The volatile anesthetic isoflurane differentially suppresses the induction of erythropoietin synthesis elicited by acute anemia and systemic hypoxemia in mice in an hypoxia-inducible factor-2-dependent manner
European Journal of Pharmacology 2014; 732: 43-49
4.Tanaka T, Kai S, Matsuyama T, Adachi T, Fukuda K, Hirota K
General anesthetics Inhibit LPS-Induced IL-1β Expression in Glial Cells
PLoS ONE 2013; 8: e82930
5.Tanaka T, Kai S, Koyama T, Daijo H, Adachi T, Fukuda K, Hirota K
General anesthetics inhibit erythropoietin induction under hypoxic conditions in the mouse brain.
PLoS One 2011;6:e29378
6.Tanaka T, Wakamatsu T, Daijo H, Oda S, Kai S, Adachi T, Kizaka-Kondoh S, Fukuda K, Hirota K
Persisting mild hypothermia suppresses hypoxia-inducible factor 1α protein synthesis and Hypoxia-inducible factor-1-mediated gene expression
American Journal of Physiology – Regulatory, Integrative and Comparative Physiology 2010; 298: R611-R671

研究室紹介(溝田グループ)

我々のグループでは、手術中の呼吸・循環パラメータの変動と患者予後との関係を調査しています。
「尿量少ないねぇ」「輸液を増やす?もう少し様子を見る?」「血圧低いなぁ」「輸液を増やす?昇圧剤を使う?それともやっぱり様子を見る?」・・・日々患者さんの麻酔管理を行う中で、そのようなジレンマを感じている麻酔科医の先生は多いのではないでしょうか。
我々麻酔科医は血圧、心拍数、経皮的動脈血酸素飽和度、気道内圧、尿量、心拍出量など様々なパラメータを指標として手術中の呼吸・循環管理を行なっていますが、実際のところそれらのパラメータがどの程度変動したら患者予後に影響が生じるのかを示すエビデンスはほとんどありません。古くから重要なモニター指標として用いられてきた血圧や尿量ですら、その変動と患者予後との関係はほとんどわかっていないのです。 我々は、手術中の様々なパラメータの変動が患者予後に及ぼす影響を明らかにし、患者予後の改善につながる呼吸・循環管理指針の策定に寄与することを目的として研究を行っています。
2017年度は、手術中の尿量と術後急性腎障害発症との関係を明らかにすることに取り組み、その成果をBritish Journal of Anaesthesia誌に発表しました(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29136086)。実は、尿量に着目して研究しようと考えたのは、ある研修医の先生から受けた「尿量って、どのくらい減ったら治療が必要なんですか?」という質問がきっかけでした。今後もこのように、臨床現場から生まれてくる素朴な疑問を大切にして研究を行って行きたいと考えています。 

(研究室メンバー)

教員:溝田敏幸
教員:深川博志

 

 

 

 

 

 

 

 

日本麻酔科学会第64回学術集会(2017年、神戸)にて最優秀演題賞獲得(左:濵田、右:溝田)
“小児肝移植手術における周術期急性腎障害の発症状況調査”

当研究グループの研究内容

文献

1.Mizota T, Iwata Y, Daijo H, Koyama T, Tanaka T, Fukuda K. Orthostatic intolerance during early mobilization following video-assisted thoracic surgery. J Anesth 2013;27:895-900.
2.Mizota T, Matsukawa S, Fukagawa H, Daijo H, Tanaka T, Chen F, Date H, Fukuda K. The clinical course of anesthetic induction in lung transplant recipients with pulmonary complications after hematopoietic stem cell transplantation. J Anesth 2015;29:562-9.
3.Mizota T, Matsukawa S, Fukagawa H, Daijo H, Tanaka T, Chen F, Date H, Fukuda K. Preoperative hypercapnia as a predictor of hypotension during anesthetic induction in lung transplant recipients. J Cardiothorac Vasc Anesth 2015;29:967-71.
4.Dong L, Mizota T, Tanaka T, Chen-Yoshikawa TF, Date H, Fukuda K. Off-Pump Bilateral Cadaveric Lung Transplantation is Associated with Profound Intraoperative Hypothermia. J Cardiothorac Vasc Anesth.2016;30:924-9.
5.Mizota T, Minamisawa S, Imanaka Y, Fukuda K. Oliguria without serum creatinine increase after living-donor liver transplantation is associated with adverse postoperative outcomes. Acta Anaesthesiol Scand. 2016;60:874-81.
6.Mizota T, Miyao M, Yamada T, Sato M, Aoyama A, Chen F, Date H, Fukuda K. Graft dysfunction immediately after reperfusion predicts short-term outcomes in living-donor lobar lung transplantation but not in cadavericlung transplantation. Interact Cardiovasc Thorac Surg 2016;22:314-20.
7.Mizota T, Hamada M, Matsukawa S, Seo H, Tanaka T, Segawa H. Relationship between intraoperative hypotension and acute kidney injury after living donor liver transplantation: A retrospective analysis. J Cardiothorac Vasc Anesth. 2017;31:582–9.
8.Matsukawa S, Hamada M, Mizota T. Low preoperative regional cerebral oxygen saturation in hemodialysis patients. JA Clin Rep.2017;3:13.
9.Mizota T, Yamamoto Y, Hamada M, Matsukawa S, Shimizu S, Kai S. Intraoperative oliguria predicts acute kidney injury after major abdominal surgery. Br J Anaesth. 2017;119:1127–34.
10.Hamada M, Matsukawa S, Shimizu S, Kai S, Mizota T. Acute kidney injury after pediatric liver transplantation: incidence, risk factors, and association with outcome. J Anesth. 2017;31:758-63.
11.溝田敏幸, 鈴木陽世, 大条紘樹, 田中具治, 福田和彦. 耳鼻咽喉科手術の術後痛に関する検討―術中フェンタニル使用の有無との関連―. 麻酔 2014;63:1249-53.

研究室紹介(甲斐グループ)

私たちのグループは、二つテーマに沿って研究を進めています。
(1)ガス状分子のエネルギー代謝に与える影響について
ガス状分子は、生体内で産生されており様々な生理的薬理的作用を持ちます。代表的なものには、一酸化窒素(NO)、硫化水素(H2S)や一酸化炭素(CO)があります。これまでに培養細胞やマウスを用いた実験を通してガス状分子の作用を明らかにしようと研究を進めてきました(参照;PMID:22004513, 26546573, 26259881)。まだ明らかになっていないガス状分子の作用(特にエネルギー代謝への関与)を発見できたらと願いつつ、現在はガス状分子が筋肉におけるエネルギー代謝にどう関わっているかに興味を持ち実験を開始したところです。
(2)病原菌の迅速同定システムの確立について
感染症への対応として、適切な抗生剤を早期投与するためには病原菌の同定が欠かせません。現在は培養検査で判定していますが、どうしても数日を要しています。近年、腸内細菌など細菌叢のメタゲノム解析が盛んに行われていますが、これらは細菌の持つ種固有の16S rDNA領域を増幅させ次世代シーケンサーを用いてシーケンスすることで各細菌を同定しています。この技術を感染症患者の病原菌同定システムとして応用できないかと研究している方々もいます(PMID:28720805)。我々はこの技術を臨床応用に向けてより改良していきたいと考えています。日本麻酔科学会から助成金をいただき、現在新規シーケンサーであるMinION(Oxford Nanopore Technologies)を用いて解析パイプラインの確立に取り組んでいます。MinIONUSBくらいの大きさのシーケンサーであり、このシステムが確立されれば、集中治療室内において数時間で病原菌を同定することが実現すると思っています。

日本集中治療医学会第46回学術集会(2019年、京都)にて優秀演題賞獲得

 


(研究室メンバー)

教員:甲斐慎一
院1:松川志乃

当研究グループの研究内容

文献

1.Wakamatsu T, Tanaka T, Oda S, Nishi K, Harada H, Daijo H, Takabuchi S, Kai S, Fukuda K, Hirota K
The intravenous anesthetics barbiturates inhibit hypoxia-inducible factor 1 activation
European Journal of Pharmacology 2009; 617: 17-22
2.Kai S, Tanaka T, Daijo H, Harada H, Kishimoto S, Suzuki K, Takabuchi S, Takenaga K, Fukuda K, Hirota K
Hydrogen sulfide inhibits hypoxia- but not anoxia-induced hypoxia-inducible factor 1 activation in a von Hippel-Lindau- and mitochondria-dependent manner
Antioxidants and Redox Signaling 2011; 16: 203-216
3.Daijo H, Kai S, Tanaka T, Wakamatsu T, Kishimoto S, Suzuki K, Harada H, Takabuchi S, Adachi T, Fukuda K, Hirota K
Fentanyl activates hypoxia-inducible factor 1 in neuronal SH-SY5Y cells and mice under non-hypoxic conditions in a μ-opioid receptor-dependent manner
European Journal of Pharmacology 2011; 667: 144-152
4.Kai S, Tanaka T, Daijo H, Harada H, Kishimoto S, Suzuki K, Takabuchi S, Takenaga K, Fukuda K, and Hirota K
Hydrogen sulfide inhibits hypoxia- but not anoxia-induced hypoxia-inducible factor 1 activation in a von Hippel-Lindau- and mitochondria-dependent manner 
Antioxidants α Redox Signaling 2012; 16: 203-216
5.Kawano Y, Kawaguchi M, Hirota K, Kai S, Konishi N, Furuya H
Effects of n-propyl gallate on neuronal survival after forebrain ischemia in rats
Resuscitation 2012; 83: 249-252
6.Suzuki K, Nishi K, Takabuchi S, Kai S, Matsuyama T, Kurosawa S, Adachi T, Maruyama T, Fukuda K, Hirota K
Differential roles of prostaglandin E-type receptors in activation of hypoxia-inducible factor 1 by prostaglandin E1 in vascular-derived cells under non-hypoxic conditions
PeerJ 2013; 1: e220
7.Kai S, Tanaka T, Matsuyama T, Suzuki K, Hirota K
The volatile anesthetic isoflurane differentially suppresses the induction of erythropoietin synthesis elicited by acute anemia and systemic hypoxemia in mice in an hypoxia-inducible factor-2-dependent manner
European Journal of Pharmacology 2014; 732: 43-49
8.Matsuyama T, Tanaka T, Tatsumi K, Daijo H, Kai S, Harada H, Fukuda K
Midazolam inhibits the hypoxia-induced up-regulation of erythropoietin in the central nervous system
European Journal of Pharmacology 2015; 761: 189-198

研究室紹介(川本グループ)

我々のグループでは麻酔薬を含む周術期関連因子が血小板機能、血液凝固に及ぼす影響に関する研究を行っています。当科における血小板研究の歴史は古く、20年以上前に遡ります。これまで当研究室に在籍された先生方はセボフルラン、プロポフォール、チアミラールなど多数の麻酔薬の血小板機能、血液凝固に対する影響を研究し、内外に積極的に発信されてきました。日々、手術麻酔を行っていて術中出血を見ない日はありません。元々私は心臓血管麻酔に興味を持ったのを機に、麻酔科医として歩み出すことに決めました。数ある手術の中で心臓血管外科手術の麻酔管理はまさに出血との戦いでもあり、麻酔管理が止血・凝固機能に影響を与えるのだろうかと興味を抱いたのがこの研究の道に進んだ理由です。
大学院時代にはICU領域で幅広く用いられている鎮静薬の一種であるデクスメデトミジンの血小板に対する研究を行い、「デクスメデトミジンは血小板表面上の二つの異なる受容体を介して、それぞれ血小板機能を増強・減弱させる両方向性作用を有する。」という興味深い結果を得て、形に残すことができました(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26435028)。現在では下記の2つのテーマについて研究を行っています。詳細は「研究紹介」をご覧ください。また2017年度からは心臓血管外科と共同研究を行い、ラット人工心肺モデルを用いた低体温循環停止による復温後の血小板機能障害に関する研究も行っております。

①関連事象がヒト血小板に与える影響、およびその作用機序に関する研究
②麻酔薬による糖尿病患者の血小板機能変化の解明と最適な周術期管理法の基盤確立


1:フローサイトメトリーを用いたデクスメデトミジンを添加したヒト血小板から産生された血小板由来マイクロパーティクル(PMP)の測定


2:ラットの人工心肺モデル(共同研究)

(研究メンバー)

教員:川本修司
院1:村田裕

18回日本静脈麻酔学会にてJSIVA賞を受賞
「デクスメデトミジンの血小板凝集に対する効果についての検討」

当研究グループの研究内容

文献

1.Kawamoto S, Hirakata H, Sugita N, Fukuda K
Bidirectional effects of dexmedetomidine on human platelet functions in vitro
European Journal of Pharmacology 2015; 766: 122-128
2.
川本修司、福田和彦
デクスメデトミジンはα2アドレナリン受容体を介してヒト血小板由来マイクロパーティクル産生を増加させる
日本集中治療医学会雑誌 2018, in press

研究室紹介(清水グループ)

オピオイドは、薬剤の種類によって耐性形成の程度や副作用の発現様式などがわずかに異なります。こうした現象は日常の診療においても臨床的に実感されることと思います。このように、同一の受容体を標的とするにもかかわらず、活性化した受容体を介したシグナル様式が各リガンド間でわずかに異なる現象は、Biased agonismもしくはFunctional selectivityなどと呼ばれます。
私たちの研究グループは、オピオイド受容体がリガンド特異的に多様なシグナルを生みだす分子機構に興味をもっています。リガンドによって活性化されたオピオイド受容体は、活性化依存的に様々な分子群と会合し、また翻訳後修飾を受け、活性型受容体複合体を形成すると想定されています。近年、オピオイド受容体はリガンド特異的な活性型構造を取り、特に細胞内領域の立体構造には、リガンド間での顕著な差異が認められると報告されました。そこで私たちは、細胞内シグナル伝達に重要な細胞内領域の立体構造が異なれば、シグナル伝達に関与する受容体制御因子もリガンド間で異なるのではないかという仮説を立て、主に生化学的な手法を用いてこれらの制御因子の解明に挑戦しています。
余談ですが、私は博士課程在籍時、京都大学医学研究科・細胞機能制御学講座(岩井一宏教授)のもとでTNF受容体機能を制御するユビキチン修飾系の研究に取り組みました。岩井教授の研究グループが、世界中の誰も知らなかった全く新しいユビキチン結合酵素を同定し、新しい研究分野を切り開いていく過程を肌で感じることができたのはとても貴重な経験でした。また、全く新しい研究分野を切り開いていく研究者に魅力を感じました。私自身がそのような研究者になることは難しいかもしれませんが、科学的にも重要な研究テーマに自分らしい切り口で真摯に取り組んでいきたいと思います。

 

(研究室メンバー)

  • 教員:清水覚司
  • 院2:宮尾真理子
  • 院1:白木敦子

文献

1.Shimizu S, Fujita H, Sasaki Y, Tsuruyama T, Fukuda K, Iwai K
Differential Involvement of the Npl4 zinc finger domains of SHARPIN and HOIL-1L in linear ubiquitin chain assembly complex-mediated cell death protection
Molecular and Cellular Biology 2016; 36: 1569-1583
2.
Fujita H, Tokunaga A, Shimizu S, Whiting A L, Aguilar-Alonso F, Takagi K, Walinda E, Sasaki Y, Shimokawa T, Mizushima T, Ohki I, Ariyoshi M, Tochio H, Bernal F, Shirakawa M, Iwai K
Cooperative Domain Formation by Homologous Motifs in HOIL-1L and SHARPIN Plays A Crucial Role in LUBAC Stabilization.
Cell Reports 2018; 23: 1192–1204

研究室紹介(加藤グループ)

私は麻酔科医として、手術中の麻酔をするだけではなく、手術前から手術後、そして退院するまで患者さんが順調に回復できるように周術期管理を担う存在でありたいと思っています。麻酔科医は手術麻酔だけでなく、集中治療やペインクリニックとさまざまな領域で技術や知識が必要となり、ますます活躍の場が広まっています。臨床においても心臓麻酔、小児麻酔、産科麻酔などを専門に究めることも魅力的ですし、基礎研究においても生理学、薬理学、生化学と麻酔科の専門的な知識が活きる場は幅広くなっています。
このような多彩な選択肢の中で、周術期合併症として大きく患者さんの予後を左右する「感染」を制御したいと考えました。私は大学院で日本のみならず世界の感染制御をリードされてきた一山智教授にも教えを賜ることができました。
現在、肺移植後アスペルギルス感染症、周術期の至適薬物血中濃度と真菌感染症の関係、ESBL産生Proteus mirabilisの細菌学的特徴と疫学やBacillus cereus感染症の季節性変動と臨床的・細菌学的特徴、そして現在注目を浴びている腸内細菌叢等幅広く様々なことに興味をもって研究しています。また、研究室で行える研究のほかにも「実践的」な感染制御にも熱意を燃やして取り組み、「演題名:麻酔科医の手指衛生の現状」で麻酔科学会支部学術集会優秀演題も頂いております。
麻酔科医とはそもそも手術室において外科医、看護師、臨床工学技士等様々な職種と協力してチームで患者さんを守る、連携の得意な職種です。感染制御にも連携は不可欠です。
研究と実践をうまく融合させてチームで患者の命を守りたいと考えています。
感染制御のほかにも「ペインクリニック」「漢方」の領域についても研究をすすめております。
麻酔科医は臨床でも活躍範囲が広く、なかなか研究にどっぷりつかる時間がありませんが、限られた時間の中でも有意義な結果を出し、医療に還元できるように邁進してまいります。

 

 

教員:加藤果林

文献

1.Hotta G, Matsumura Y, Kato K, Nakano S, Yunoki T, Yamamoto M, Nagao M, Ito Y, Takakura S, Ichiyama S
Risk factors and outcomes of Stenotrophomonas maltophilia bacteraemia: a comparison with bacteraemia caused by Pseudomonas aeruginosa and Acinetobacter species
PLoS One 2014; 9: e112208
2.Nakano S, Matsumura Y, Kato K, Yunoki T, Hotta G, Noguchi T, Yamamoto M, Nagao M, Ito Y, Takakura S, Ichiyama S
Differentiation of vanA-positive Enterococcus faecium from vanA-negative E. faecium by matrix-assisted laser desorption/ionisation time-of-flight mass spectrometry
International Journal of Antimicrobial Agents 2014; 44: 256-259
3.Kato K, Nagao M, Nakano S, Yunoki T, Hotta G, Yamamoto M, Matsumura Y, Ito Y, Takakura S, Chen F, Bando T, Matsuda Y, Matsubara K, Date H, Ichiyama S
Itraconazole prophylaxis for invasive Aspergillus infection in lung transplantation
Transplant Infectious Disease 2014; 16: 340-343
4.Nakano S, Matsumura Y, Ito Y, Fujisawa T, Chang B, Suga S, Kato K, Yunoki T, Hotta G, Noguchi T, Yamamoto M, Nagao M, Takakura S, Ohnishi M, Ihara T, Ichiyama S
Development and evaluation of MALDI-TOF MS-based serotyping for Streptococcus pneumoniae
European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases 2015; 34 :2191-2198
5.Kato K, Matsumura Y, Yamamoto M, Nagao M, Ito Y, Takakura S, Ichiyama S
Seasonal trend and clinical presentation of Bacillus cereus bloodstream infection: association with summer and indwelling catheter
European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases 2014; 33: 1371-1379
6.Yunoki T, Matsumura Y, Nakano S, Kato K, Hotta G, Noguchi T, Yamamoto M, Nagao M, Takakura S, Ichiyama S
Genetic, phenotypic and matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry-based identification of anaerobic bacteria and determination of their antimicrobial susceptibility at a University Hospital in Japan
Journal of Infection and Chemotherapy 2016; 22: 303-307
7.Kato K, Nagao M, Yamamoto M, Matsumura Y, Takakura S, Fukuda K, Ichiyama S
Oral administration and younger age decrease plasma concentrations of voriconazole in pediatric patients
Journal of Infection and Chemotherapy 2016; 22: 27-31
8.Kato K, Nagao M, Miyamoto K, Oka K, Takahashi M, Yamamoto M, Matsumura Y, Kaido T, Uemoto S, Ichiyama S
Longtidual analysis of the intestial microbiota in liver transplantation
Transplantation Direct 2017; 3: e144
9.Kato K, Matsumura Y, Yamamoto M, Nagao M, Takakura S, Ichiyama S
Regional spread of CTX-M-2-Producing proteus mirabilis with the identical genetic structure in Japan
Microbial Drug Resistance 2017; 23: 590-595
10.堀田剛、松村康史、加藤果林、中野哲志、柚木知之、山本正樹、長尾美紀、伊藤穣、高倉俊二、一山智
Stenotrophomonas maltophilia 菌血症の危険因子と臨床的特徴:その他の非発酵菌菌血症との症例対照研究
感染症学雑誌 2014; 87: 596-602

研究室紹介(瀬尾グループ)

教員:瀬尾英哉

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