大学院生の募集

当教室の大学院に関する考え方

当教室は、麻酔科学の分野での研究をさらに推進する為に、所属する医局とは無関係に全国の麻酔科医に大学院を開放しています。

生活費を得る為のアルバイトをして頂く事は可能です。現在平均して週に2回のアルバイトをして頂いています。アルバイト先の紹介などは責任を持ってさせて頂きますので京都、関西地区に地縁のない方でも問題はありません。

当教室では4年間の大学院教育を通じて独立して研究を出来る研究者の育成に力を入れています。当教室の研究内容は多岐にわたり、実験器具などもかなり広範囲で揃っています。また、当教室には強力な研究協力者が多数います。

京都大学は学問をするのにきわめて適した場所です。
このような特長を持った京都大学麻酔科の大学院で4年間思いっきり研究をしてみませんか。

研究生募集の御案内

京都大学大学院医学研究科・侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野は、研究生の募集を行っています。
研究生の受け入れは随時行っております。先ず下記まで御相談下さい。

連絡先
〒606-8507 京都市左京区聖護院河原町54
京都大学大学院医学研究科・侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野
tel:075-751-3433 fax:075-752-3259
助教:加藤果林 ( karin@kuhp.kyoto-u.ac.jp )

大学院生の日常

辰巳 健一郎(博士課程4年)

私が大学院に行こうと思ったきっかけは、臨床に関してはある程度はできるようになってきたし何か新しいことをはじめてみたい、と思い出したからでした。
研究するにあたり具体的なやりたいテーマを持っていたわけではありません。
せっかく研究をはじめるなら日常の臨床に少しでも関連したことができればと思い、麻酔科の研究室でお世話になることにしました。

院生生活についてですが、研究日が週3日と外勤日(麻酔バイト)が週2日あります。
臨床から完全に離れるわけではないので日常生活に困ることはないと思いますし、手技の感覚を忘れることもありません。
研究日には週1回程度、進捗状況を報告し指導教官と相談しながら実験を進めています。はじめの頃は(あたりまえかもしれませんが)、それまで学生実習以外で実験器具など扱ったことがなかったので戸惑うこともありましたが、半年ほど経って一通りの器具の扱い方、実験方法を覚えると少しずつ心に余裕も出てくるようになりました。

私は他大学出身ですので正直なところ入学前はやっていけるのか不安もありましたが、麻酔科の研究室では丁寧に指導してもらえますし行き詰まったときにはすぐ相談に乗っていただける環境にありますので心配はいらないと思います。
臨床でもそうですが、基礎的な研究において、実験を組み立て進めていくには、特に論理的に考えることが重要になってきます。
大学院は論理的思考を身につける良い機会だと思います。少しでも研究生活ってどんな感じかな?と興味を持たれたら、一度研究の世界を覗いてみるのもいいですよ。臨床だけでは得られない、長いようで短い4年間を経験する意味はあるように思います。

橋本 一哉(博士課程3年)

現在私は、福田教授のご厚意のもと、京都大学iPS細胞研究所江藤研究室というところで iPS細胞から血小板を造る研究をさせていただいております。

研究所の方からはよく「なぜ麻酔科医が血小板の研究をしているの?」と不思議がられます。
現に研究室の院生の多くは血液内科医ですが、麻酔科の方々なら臨床現場において血小板輸血が不足しがちであるという現状と、iPS細胞から血小板ができればその状況はきっと一変する、という想像 は理解してくださると思います。

大学院に入るまでは臨床一辺倒で基礎研究などしたことがなく、院生になってはじめてピペットを握ったレベルでした。
しかし、iPS細胞研究所というところにはMDの博士課程の 大学院生が多く、研究などしたことがないという人も意外と多く入ってくるため、基礎的な実験手技等は丁寧に教えていただけました。
今でもまだまだ学ぶべきことは多いですが 、身についた基礎的手技の範囲内では自分のアイデアで自由に実験をさせていただいています。

臨床現場においては自分の思いつきを試してみることはかなり難しいですが、基礎研究の世界では思いついたことをすぐ実験に移せます。
その実験はだいたい失敗に終わるのですが、ごくまれに思った通りの結果や思った以上の結果、さらには意外な結果が出てきたときの興奮は臨床では得られないものがあります。

また、英語でプレゼンする機会も多く、英語力の向上という意味でも鍛えられます。
臨床についてですが、現在週一+αで外勤をさせていただいております。外勤先について もいろいろご配慮くださっているため、生活面でもなんら問題なく過ごせています。前述したように研究所にはMDが多いため、外勤に行くことで白い目で見られたこともないと思います。

週に一回麻酔をすることで、研究漬けの状態からリフレッシュされ、いいサイクルで日々を過ごせている気がします。iPSに限らず、京大には優れた研究者が非常に多く、研究施設もたくさんあります。少しでも研究に興味があれば、京大にも興味を持っていただけたらと思います。

武田 親宗(博士課程2年)

突然ですが、 例えば『雨が降らない→雨乞いをする→雨が降る』という話のときに、本当に『雨乞いをした(原因)→雨が降る(結果)』という因果関係があるのでしょうか?
仮に雨乞いをしなくても、しばらくしたら雨は降ったかもしれません。このように直接の因果関係がないものを因果関係があるように考えて治療が行われていることがしばしばあります。

患者さんにとって本当にOutcomeを良くする治療は何か?そういうことを考える内にこのような分野に興味をもち、社会健康医学専攻の『薬剤疫学』教室にお世話になり麻酔・集中治療領域の臨床研究をおこなっています。

京大麻酔科は伝統的に基礎研究が盛んな学風であり、社会健康医学?薬剤疫学?何それ?という感じではありますが、私は実際の現場での臨床疑問を解決する手法としての臨床研究に興味をもち、京大内で留学という形を取らせていただいております。(このような形で研究指導委託は、薬剤疫学の川上教授のご厚意であり、全ての社会健康医学系の教室が可能という訳ではありません) 社会健康医学系では、1年次には、大学生のように月〜金まで授業がたくさんあり、疫学の基本的な考え方や臨床研究の疑問の立て方など様々なことを学びます。(詳しくは京大SPH(公衆衛生大学院)やMCRコース(京大SPHの医師向けの臨床研究のコース)のホームページを御覧ください)

そもそも、疫学や臨床研究に興味をもつ契機は、神戸の中央市民でICU再入室患者のリスク因子を調べる研究を行った際に、統計・疫学の知識があまりになく、一度きちんと学びたいという思いがあったからです。
そして現在いろいろ学び研究をすすめる楽しさ(困難さ)を実感しております。 また、恥ずかしながら1年次の講義ではじめて知ったのですが、(専門医試験にも出る)ジョン・スノー博士は麻酔科医であり、1853年にビクトリア女王の無痛分娩をクロロホルムで行った人物としても有名なのですが、それ以上に有名なのは1854年のロンドンのコレラ疫を抑えた人物であるということです。
彼は所謂、疫学的field workをし、ブロード・ストリートにあるポンプ井戸の水が“コレラを起こす何か”を含んでいるということをつきとめ、その井戸水を飲まないように周知することでコレラ疫を抑えました。
真理を追求する際にミクロな視点だけではなくマクロな視点も大事なのではと私は考えています。

京大麻酔科内で研究しなくてよいのか?という疑問も持たれる方もおられるかもしれません。しかし、伝統的に、麻酔科だけではなく、基礎の研究室などにお世話になる文化があります。(福田教授は沼先生の研究室にいかれておられたり、多くの大先輩方も。
また、近年ではiPS研究所や感染制御部などにも)私の場合も、福田教授の『日本の(京大の)麻酔科の進歩に貢献するなら』と背中を押していただけて、やりたい臨床研究をさせていただいています。また、同門会や麻酔科研究室の集まりにも参加していますので、4年間で麻酔科とすっかり疎遠になる、ということも全くありません。
臨床麻酔に関しても、完全に離れてしまう訳ではなく、週1,2日の日中の外勤日をいただいており、各病院では当日の中心的な役割をまかされることも多く、臨床の勘を失うこともありません。このように、私たちの大学院生活は、研究面でも、臨床面でもとても恵まれた環境です。

「そろそろ臨床は一通り出来るようになったし、次のキャリアアップはどうしよう・・・。」と思っておられる先生方がおられましたら、一度研究の世界を覗いてみるのもいいと思います。お待ちしております。 臨床研究に興味がある方、是非一緒にやりましょう!

廣津 聡子(博士課程2年)

こんにちは、博士課程2年の廣津と申します。
私は初期研修2年間を京大病院で過ごし、その後市中病院で臨床に4年間携わった後に大学院に進学しました。

麻酔科医として働き始めた頃は、臨床麻酔が楽しくて、研究の分野にはあまり興味を抱いていませんでした。
しかし、臨床の現場で出会った多くの先生から、研究生活を経験すると臨床の幅が広がるよ、というアドバイスをいただき、一通りの臨床麻酔ができるようになってきたと感じた卒後6年目頃より、研究にも興味を持ちはじめました。

特にこのテーマで研究がしたい、というのがないままで果たして大学院に進学してもよいのだろうか、という不安がありましたが、福田先生をはじめ、麻酔科の先生方のご厚意のもと、大学院生として久しぶりに京都大学に帰ってまいりました。
現在、週に2日の外勤日と3日の研究日をいただいて、研究生活を送っています。完全に臨床の現場から離れていないため、臨床の感覚が極端に落ちることもありませんし、生活面でも問題はありません。

研究は初心者で、入学したての頃は何をしてもうまくいかず辛い時期もありましたが、この1年間で指導医の田中先生をはじめ多くの先生方にご指導をいただき、少しずつ実験もできるようになってきました。
また、基礎系の論文に触れる機会も格段に増えました。
以前は、figureを見ても、どのような実験系でどう解釈したらいいのか、全くわかりませんでしたが、自分で実験をするようになってからは、自分なりの考えを持ってデータを解釈しながら読めるようにもなってきました。

大学院への進学を少しでも迷われることがありましたら、ぜひ、進学されることをおすすめします。私自身、研究を語るにはまだ未熟ですが、院生生活の間に、臨床麻酔だけでは得られない貴重な経験をすることができる、ということは間違いないと思います。

岩田 良佳(博士課程1年)

この4月より京都大学麻酔科学教室で指導頂いております。
私は現在卒後11年目で、大学院生活を始めるには遅いスタートになります。久しぶりに会う先生に自分の近況として大学院に進学することを伝えると、「今から行くの?」と言われることが少なくありません。
それでも今回私が大学院に進学することを決めたのは、自分には物事を論理的・学術的に考えるというプロセスが明らかに不足していると思ったからです。

私は幸運にも麻酔科医という仕事が自分に合っていたようで、これまでの臨床医としての10年間、もちろん時にしんどい日々はありましたがほとんどストレスなく過ごすことができました。
多くの先生方のご指導の下幅広い麻酔経験を積ませても頂き、自分の臨床医としての足場をそれなりに固めることができたように思います。
しかし一方で、論理的・学術的思考力がそれに伴っていないことがずっと自分の中で引っかかっていました。
私は苦手なことや不得意なことは、目標として明確に設定しないと向き合えないタイプです。実際は私が勝手に思っているほど直結するものではないのかもしれませんが、研究生活を通じて系統だった思考プロセスを少しでも養うことができればと思い、遅ればせながら大学院生活に足を踏み入れてみることにした次第です。

この原稿を書いているのは4月末で、率直に言って現時点で大学院生の日常について語ることはできません。
今後どのような生活になっていくのか、不安と期待が入り混じった気持ちで日々を過ごしている状態です。
ですが、このわずか1ヶ月の間だけでも、臨床だけに従事していればおそらく得ることができなかった経験をたくさんさせて頂いています。

大学院生活は臨床の休み時間とよく言われますが、私は臨床への関わり方を見つめ直す時間と考えます。大学院生活ならではの経験を積み重ねて、今後また臨床の場に戻った時に何らかの形でその経験をフィードバックすることができたら、そう思っています。

ある元・大学院生の回想

私が大学院に入学したのは、はや数年前になります。私自身は外科からの転科組ですので、大学院に入ったのは卒後9年目でした。
とりあえず、それまでは臨床しかしたことがなかったですし、実験といっても、学部学生のころに自主研究でちょこっとやったぐらいで、知識もほとんど皆無でした。大学院に入ったのも、何か高尚な動機があったわけではなく、そろそろ臨床のこと以外でもやってみようか、また丁度そのとき子供ができた(当方はMaleですが)こともあって、子育ても一緒にやろうか、というはなはだ不純な?ものでした。
ですので、何か心に秘めた研究テーマなど当然あるわけもなく、何かあまりしんどくなく、かつ臨床にlinkしたようなことができれば、と漠然と考えていました。当時、麻酔科の院生は、何人かは基礎系の研究室に入って研究するということもありましたが、私は、とくにやりたいテーマもなかったので、麻酔科に残って研究することになりました。

当時麻酔科内での研究グループは3つばかりありましたが、個人的に広田先生は、学生のころから面識があったこともあって、広田グループにお世話になることになりました。

1. 広田グループにて(低酸素研究)

広田グループのメインテーマは何といっても低酸素になります。
よく考えてみると、麻酔科医が日常にらめっこしているVital signも、要は全身(もしくは重要臓器)に酸素がいきわたっているかどうかを示すもので、実際このvital signがどの程度変化すれば、組織は低酸素となるのか、またどのような低酸素反応を示すのかということは、なかなか興味深くかつ重要なことではないかと思います。

低酸素研究のまず第一歩は、HIF(hypoxia-inducible factor)について勉強するところから始まりました。
HIFは、LiSAにも特集されていましたが、低酸素に反応して活性化する転写因子で、細胞レベルの低酸素応答に極めて重要な機能をはたしています。
もう少し詳しく述べますと、低酸素になると、HIF分解が劇的に抑制され、転写活性を有するようになり、EPO(赤血球産生)、GLUT-1(解糖)、VEGF(血管新生)などといった、多数の遺伝子を誘導することがしられております。
HIFは、多数の研究者のターゲットになっていますが、これまでは、癌の低酸素部分においてこのHIFが活性化しており、そのために抗癌剤や放射線に抵抗性になるという報告が多数あり、癌治療の標的としての研究がさかんになされています。
一方、急性虚血でも、やはりHIFの活性上昇がおこるとされており、HIFが虚血preconditioningに不可欠という報告もなされています。

ということで、このHIFが、麻酔臨床上起こりうる状況で、どのように変化しているのか、ということは麻酔科領域の研究として意義のあることではないかと思います。では、実際臨床の場で虚血低酸素になるときはどんなときか、と考えてみたときにイメージしたのは、下肢の急性動脈閉塞でした。
外科にいたときに、何例か経験したことがありましたが、虚血側の足が冷たくなり、これを再開通させたときに、温度が一瞬で回復したのが印象的でした。
よく考えてみると虚血になったときは、血流がないわけなので、当然温度も変化すると考えられます。
また臓器移植などでは、血流のない臓器の温度を意図的に下げることも日常よく経験するところです。というようなことで、低酸素応答とくにHIFに温度変化がどのように影響するかをしらべてみることになりました。

2. 実際の研究展開

大学院生の研究紹介

HIFの活性はWestern blottingによりHIF蛋白を検出するのが一般的です。
これについては、いままで広田グループでいつも行われていたので、私もみようみまねで始めるようになりました。
とにかく、まずは培養細胞を低温かつ低酸素状態とし、HIFの活性を調べました。
そして、ある一定の傾向がわかってくると、他の細胞でも同様の実験を繰り返しました。さらにHIFの下流遺伝子の活性変化をPCRにて調べていきました。
まあ、ここらへんまでは、だいたい1年ぐらいでまとまってきたのですが・・

つづいてはじめたのが、動物(マウス)用いた実験でした。実際に下肢虚血モデルを作製して、下肢筋肉内のHIF活性を調べるというものでした。
まず、広田グループではそれまでに動物の実験はほとんど経験がなかったので、マウスの扱い方から改めてはじめる必要がありました。
幸いいつも勉強会を一緒にさせていただいている別のラボの先生が基本を教えてくださり、論文に書いてあるやりかたをみつつ、まさに手探りで、動物実験をすすめていきました。
次第に、マウスの麻酔方法や、顕微鏡を使用した手術方法などが少しずつわかるようになり、手術自体は安定してできるようになりました。
そこで、虚血側の下肢筋肉のHIFの活性を、やはりWestern blottingで検出するよう試みたのですが、これが難物でした。とにかく目的のバンドがでず、抗体の種類や蛋白抽出の方法などいろいろためしてみましたが、どうしてもうまくいきませんでした。
あとで聞いてみると、HIFの動物でのWestern blottingは結構むつかしくて、基礎の研究室でも苦労しているところがあるとのことでした。そんなこんなで2年目は、駄目なデータのみでファイルが1冊できてしまうという有様でした。

もし私が基礎の研究者なら、これでかなり落ち込んでいただろうと思いますが、(そもそもこのようなことにならないでしょうが)、週1-2回は臨床もしていましたので、そちらで発散して、別に気分的にも暗くなることはありませんでした。
またありがたいことに、ミーティングで、駄目な結果ばかりだしていても、非難されることもなく、すきにやらせていただきました。基礎の研究室ならこうはいかないと思いますし、まあそれぞれよいところがあるのではないでしょうか?

3年目のはじめになって、ようやく光明がみえてきました。Western blottingはあいかわらずでしたが、転写因子をELISA法で計測するというkitがあって、HIFをこれで計測した論文が掲載されていたのです。かなり高価でしたが、お願いして1セット購入し、計測したところ、今度はうまく計測することができました。

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3. いまふりかえると

いまふりかえると、うまく結果がでない実験には、やはり合理的な理由があるように思います。 ですが、うまくいかないときほど、まわりがみえていない=したがって何が原因であるががわからないのではないでしょうか?(全然えらそうなことはいえませんが・・)

研究を始めて4年目になりますが、前は、ただとにかく手を動かすことに懸命になっていたように思いますが、序々に、このことを証明するのに必要な実験は何か?と考えながらすすめるようにしています。
このようになにか合理的なプロセスをふんで、物事をすすめていくというトレーニングというのは、今後臨床に戻っても、とても重要なことではないかと思います。

臨床では、あまり派手に失敗することはできませんが、幸い研究では(少なくとも広田グループでは)自分で考えて、失敗しながらでもすすめていくことが許されています。
大学院での4年間というのは長いようで短い貴重な期間でありますが、たとえ、将来研究者になるのでなくとも、十分意味のある成果がえられうる?のではないでしょうか?

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