術中呼吸・循環管理指針策定に向けた大規模データベースの構築
手術中に循環器系・呼吸器系を始めとする様々な器官に生じる生理的変動を制御することは我々麻酔科医の重要な使命の一つです。例えば全身麻酔薬や麻薬の作用によって生じる血圧や心拍出量の低下に対して輸液負荷や心血管作動薬の投与を行うことで全身の臓器灌流を維持し、自発呼吸の消失に対して陽圧換気を施行し、酸素投与や呼気終末陽圧を用いることで無気肺の形成や換気血流不均衡増大に伴う低酸素血症を予防します。
そのような呼吸・循環管理を行うための指標として血圧、動脈血酸素飽和度、気道内圧、心拍出量等の呼吸・循環パラメータが広く用いられていますが、実はそれらのパラメータがどの程度の変動を来した時に患者予後への影響が生じるのかについての臨床的エビデンスはほとんどないというのが実情です。
我々は、術中の呼吸・循環パラメータの変動に関する情報を効率良く抽出・解析できるデータベースを構築し、それに基づいて術中の呼吸・循環変動が予後に及ぼす影響を明らかにすることで患者予後の改善につながる呼吸・循環管理指針の策定に寄与するエビデンスを提供することを目的として研究しています。
【深川博志・溝田敏幸】