細胞の低酸素応答

周術期には、呼吸・循環動態の変動や貧血などにより組織への酸素供給が低下し、臓器が低酸素に陥る危険性があります。臓器が低酸素に陥った際には、臓器レベル・細胞レベルまた分子レベルで様々な低酸素応答が生じます。我々は、細胞の低酸素応答に重要な役割を果たしている低酸素誘導性因子（hypoxia-inducible factor, HIF）について研究しています。

HIFは転写因子であり、その支配下にある血管増生因子・解糖系酵素・アポトーシス抑制遺伝子などの多数の遺伝子を誘導する事により、低酸素下の細胞を生存に導く事が知られています。周術期に使用される薬剤や低体温などの環境変化は、HIFの活性とその支配下遺伝子の発現に影響を与えて細胞の低酸素応答を変化させる事を、我々は多数報告してきました。

我々は、HIFの研究を通じて、周術期に起こり得るあらゆる変化が分子・細胞・臓器そして生体に与える影響を解明する事を目指しています。

【松山智紀、甲斐 慎一、大条 紘樹、田中 具治、広田 喜一】