教授挨拶

“考えて行う麻酔”
出典;江木盛時、臨床麻酔 Vol46/No6(2022-6)

“麻酔科医;一隅を照らす”
出典;江木盛時、麻酔 Vol72/No3(2023-3)

“重症患者の頭側に立つ医師として”
出典;江木盛時、Anet Vol28/No1(2024-2)

2025年度;年度初めの挨拶

2025年4月を迎えて
2022年4月1日より、京都大学大学院医学研究科 侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野教授、および京都大学医学部附属病院集中治療部部長を拝命し、京都大学に赴任いたしました。2025年4月となり4年目の春を迎えました。御縁をいただき大切な仲間となった京大麻酔科の先生方に助けていただきながら、貴重な時間を過ごし、多くのことを学ばせていただきました。今年もまた、新たな仲間の皆さんをお迎えできることを大変うれしく思います。

信頼され、必要とされる麻酔科医の育成を目指して;— 京大麻酔科の伝統を大切に —
京都大学大学院医学研究科 侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野(旧・京大麻酔科)は、1956年に初代教授・稲本晃先生によって開講された歴史と伝統を持つ麻酔科学教室です。その後、1973年から森健次郎先生、1998年から福田和彦先生が教室を主宰され、麻酔・集中治療・ペインクリニックの各分野において優れた実績を残されました。また、本講座は、多くの大学教授をはじめとする優秀な医療人を輩出し、社会に大きく貢献してきました。
 京大麻酔科に脈々と受け継がれてきた信念は、その講座名「侵襲反応制御医学」に象徴されています。手術・外傷・感染といった侵襲から患者を護り、さらには、その侵襲によって生じる有害な生体反応を制御することが麻酔科医の使命です。この理念のもと、京大麻酔科は手術麻酔、集中治療、ペインクリニックの三部門を担いながら発展してきました。
 麻酔科医は病院の中央診療部門の要として、質の高い周術期管理を実践し、先進的医療を支える役割を担っています。京大麻酔科では、術前・術中・術後の管理を包括的に行う「周術期管理学」を重視し、集中治療や術後疼痛管理にも力を注いでいます。このような実践こそが、信頼され、必要とされる麻酔科医の育成につながると思います。
 京大麻酔科の先生方とともに、確かな伝統を大切にしながら、一人でも多くの患者さんに最高水準の医療を提供するため、そして、豊かな知識、確かな技術、柔軟な対応力、さらにはチームをまとめるコミュニケーション能力を兼ね備えた医療人の育成を目指して、診療、教育、研究を行って参りたいと思っています。

=考えて行う麻酔= 伝統を守り、進化・発展を目指す
現在、麻酔科学、周術期管理学、集中治療医学、ペインクリニック領域における知識と技術の進歩は非常に速く、新しい知識や技術を積極的かつ柔軟に取り入れ、変化に対応できる医療人を育成することが重要です。そのためには、既存の枠にとらわれることなく、自ら考え、麻酔や周術期管理を行うことが求められます。
 “考えて行う麻酔”を実践するには、患者さんの状態をしっかりと評価し、確固たる知識をもとに、必要に応じて仲間に相談することができる器量が必要です。考えて麻酔を行うことは、麻酔・集中治療・ペインクリニックの各領域において、どんな状況にも適切に対応できる医療者としての素養を養うことだと考えています。
 麻酔科医が全身管理を担当する患者さんの中には画一的な診療では対応できない重症患者さんが含まれます。その診療において、考えて行う麻酔の効果は最大化され、また、将来信頼され、必要とされる麻酔科医の育成においても大きな推進力となります。そのため、当科では、麻酔の方法を固定せず、プロトコールに沿った一律の方法をルール化することはありません。新しい知識、新しい技術、新しい機器に対し常にアンテナを張り、京大麻酔科の先生方が柔軟に進化。発展できるようにしていきたいと思います。


=多様性の中での一体感=Organized chaos
京都大学麻酔科では、個々の多様性を大切にし、それぞれがのびのびと自由な環境で行動しながら、ここぞというときに一致団結して問題解決にあたるチームの力を大事にしたいと思います(Organized chaos)。このようなチームを維持するために、“Patients first”の心をもって診療に臨み、仲間の良い部分や目標をお互いに認めて尊敬し、思いやりと助け合いの気持ちを持ちながら、皆がそれぞれの目標に向かって自由に歩みを進めてもらえるようにしたいと思います。 微力ながら、患者さんと麻酔科の仲間の皆さんのためにできる限りお役に立ちたいと心より思っています。

=仲間を大切に=
人は、他者とのつながりの中で自分の居場所を見つけることができると考えています。助け合いや思いやり、お互い様の気持ちを持ちながら、仲間が困っていれば手を差し伸べ、自分が困ったときには素直に助けを求めることができれば、きっと良いチームができ、仲間の輪も広がっていくと信じています。私も、仲間の皆さんの支えがあって、今の自分があると感じています。その分、少しでも皆さんのお役に立てるよう、日々努力していきたいと思います。

=自身への誓いと支えてくれるモットー=
本年度における自信への誓いと、教えていただき、自身の支えとなっているモットーをお伝えしたいと思います。

=自身への誓い=
・仲間の力を信じる。人を大切にする。
・仲間を繋ぐ言葉の力を信じ、丁寧に使う。
・思いやりをもった多様性のある集団を作る。
・変化を恐れず、進化する。
・一人一人にやりがいと役割があるチームを作る。

=モットー=
・人生は縁が大事 (人が大事、人とのつながりが大事)
・人生の価値は、受けた影響と与えた影響で決まる (教育が人生を変える)
・おかれた場所で花を咲かせる (自身の仲間を愛し、大切にする)
・Enjoy Yourself (どんな時も人生を楽しむ)

これまでの京都大学麻酔科の歴史と伝統を守りつつ、京都の地において多くの麻酔科医がのびのびと自由に学び育ち、そして活躍していける麻酔科学教室としてさらに発展し、患者様をはじめとする全ての方々のお役に立てればと考えています。 今後もどうぞよろしくお願い致します。

2025年4月
京都大学大学院医学研究科侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野 教授
京都大学医学部附属病院集中治療部 部長
江木 盛時

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