教授挨拶
2022年4月1日から京都大学大学院医学研究科侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野教授、京都大学医学部附属病院麻酔科科長を拝命し、京都大学に赴任しております。
京都大学麻酔科(現 京都大学大学院医学研究科侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野)は、1956年に初代教授の稲本晃先生が開講された伝統ある麻酔科学教室です。
稲本晃先生に続き、1973年から森健次郎先生、1998年から福田和彦先生が教室を主宰され、麻酔・集中治療・ペインクリニックにおける臨床、教育、研究すべての分野で多くの実績を残し、これまで数多くの大学教授を含めた優秀な医療人を輩出し、社会に大きく貢献しています。
=京都大学麻酔科の伝統を大切に=
このたびの教授就任にあたり、まず私が考えたことは、京都大学麻酔科の伝統を大切にし、一人でも多くの患者さんへ最高水準の医療を提供するため、豊かな知識、確かな技術、柔軟な対応力とチームをまとめるコミュニケーション能力を持った医療人の育成を目指して、診療、教育、研究を行って参りたいということです。
京都大学麻酔科に受け継がれる信念は、その侵襲反応制御医学講座の名に表れていると言えます。手術や外傷、感染といった侵襲から患者を護り、またその侵襲によって生じる有害な生体反応から患者を護ることが麻酔科医の使命です。
麻酔科医は病院中央診療部門の要であり、より先進的医療を推進するためには質の高い麻酔の実践が必要です。そのためには、術前管理と集中治療を含めた術後管理を行う周術期管理学の実践が必要と考えます。
=考えて行う麻酔=
現在における、麻酔科学、周術期管理学、集中治療医学、ペインクリニック領域の知識と技術の進歩は極めて速いため、新しい知識、技術を積極的かつ柔軟に取り入れ、変化に対応できる医療人を育成する必要があります。そのためには、型にはまることなく、自身で考えて麻酔・周術期管理を行うことが大事だと思います。 “考えて行う麻酔”を真摯に実践するには、患者さんをしっかり評価し、確固たる知識を得た上で、必要に応じて仲間に相談する器量が必要です。考えて麻酔を行っていくことは、麻酔・集中治療・ペインクリニックの各領域において、どんな状況にでも対応できる医療者となる素養になると思います。
=自由と多様性とチーム力=
京都大学麻酔科では、個々の多様性を大切にし、それぞれがのびのびと自由な環境で行動しながら、ここぞというときに一致団結して問題解決にあたるチームの力を大事にしたいと思います。 このようなチームを維持するために、“Patients first”の心をもって診療に臨み、仲間の良い部分や目標をお互いに認めて尊敬し、思いやりと助け合いの気持ちを持ちながら、皆がそれぞれの目標に向かって自由に歩みを進めてもらえるようにしたいと思います。 微力ながら、患者さんと麻酔科の仲間の皆さんのためにできる限りお役に立ちたいと心より思っています。
=モットー=
教えていただき、自身の支えとなっているモットーをお伝えしたいと思います。
・人生は縁が大事 (人が大事、人とのつながりが大事)
・人生の価値は、受けた影響と与えた影響で決まる (教育が人生を変える)
・おかれた場所で花を咲かせる (自身の仲間を愛し、大切にする)
・Enjoy Yourself (どんな時も人生を楽しむ)
これまでの京都大学麻酔科の歴史と伝統を守りつつ、京都の地において多くの麻酔科医がのびのびと自由に学び育ち、そして活躍していける麻酔科学教室としてさらに発展し、患者様をはじめとする全ての方々のお役に立てればと考えています。 今後もどうぞよろしくお願い致します。
2022年4月
京都大学大学院医学研究科侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野教授 江木 盛時